令和7年11月

 11月中旬、大手道から春日山に入り、岩木三叉路、権現堂、南三の丸を経由して本丸に至り、直江屋敷、春日山神社、愛宕谷池を経由して愛宕谷公園に下りました。

 以下の植物や動物を観察できました。

ミゾソバ  イヌタデ  リンドウ  モリアザミ  セイタカアワダチソウ  ススキ  
ガマズミ  ニシキギ  ブタナ  アキノキリンソウ  キッコウハグマ  スミレ  
イヌガラシ  カタバミ  ミズヒキ  オオバコ  チカラシバ  ハナタデ  
キンエノコロ  エノコログサ  アキノエノコログサ  ツリガネニンジン  
オクトリカブト  ヤクシソウ  コウゾリナ  スギヒラタケ

シロスジヒメバチ  アキアカネ  キチョウ  ヨモギハムシ

シジュウカラ  アオゲラ  アカゲラ  コゲラ  メジロ  ヒヨドリ  ヤマガラ  
エナガ  ヒガラ

イノシシ  シカ


ニシキギの実
ツルアリドオシの実
ヤブコウジの実
キッコウハグマ
スミレ
スギヒラタケ

 11月中旬、大手道から岩木三叉路までの山中で、ニシキギ、ツルアリドオシ、ヤブコウジなどが実をつけていました。いずれも赤い実で、森の中で目立ちます。ニシキギは、初夏に花をつけていたはずですが、目立たない花ということで、見落としていたようです。新潟県版レッドデータブックでは、ニシキギは準絶滅危惧種に指定されています(2)。ヤブコウジの実は正月飾りに用いられ、同じサクラソウ科ヤブコウジ属のマンリョウ、センリョウ科センリョウ属のセンリョウ、ヤブコウジ属のカラタチバナ(別名をヒャクリョウ)に倣って、ヤブコウジもジュウリョウと呼ばれるそうです。
 キッコウハグマは権現堂から南三の丸に至る山中で見つけました。キッコウハグマはちょっと変わっていて、三つの花が一つの花のように集まってついています。小さく目立たないですが、なかなか可憐な佇まいです。
 南三の丸では、スミレの花を見つけました。どの図鑑にも、スミレの花期は春であると書かれています。しかし、スミレは温暖な気候や旱魃などがあると、秋にも花を咲かせることがあります。これを返り咲きというそうです。南三の丸では昨年の秋もスミレが咲いていました。今年の上越は特に酷い渇水を経験したせいか、イヌタデの群生の中にいくつも咲いていました。
 春日山神社から御屋敷阯に降りる途中、杉の倒木にスギヒラタケを見つけました。かつて食用キノコとして人気があったそうですが、2004年以降、主に腎機能障害を持つ人に急性脳症の症例が多数報告され、死亡例もあったことから、毒キノコとして認知されるに至った稀有なキノコです。では、2004年より前は毒を持っていなかったのか、というと、そうではなく、単にスギヒラタケによる食中毒事例があっても、その原因がスギヒラタケだと考えられていなかっただけのようです。斯くして、スギヒラタケの毒成分に関する研究が始まったものの、その正体は長らく不明のままでしたが、2022年に静岡大学農学部の河岸洋和特別栄誉教授らがスギヒラタケによる急性脳症の発症機序を報告しました(3)(4)。こうしてスギヒラタケは科学的にも毒キノコであることが証明されましたが、長く食用にされてきた歴史もあることから、行政はスギヒラタケに対する注意喚起を現在も続けています。


シロスジヒメバチ(推定)
ヨモギハムシ

 11月中旬、活動している昆虫がめっきり減りましたが、御屋敷阯でハチ目ヒメバチ科の昆虫を見つけました。ヒメバチ科の昆虫は同定が難しいようですが、恐らくこれはシロスジヒメバチと思われます。ガの幼虫に卵を産みつける寄生バチですが、この時期になると、もうガの幼虫を見つけるのは難しいでしょうね。
 大手道には、ヨモギハムシがいました。ヨモギハムシは晩秋に交尾し、卵を産んで、そのまま越冬するそうです。この個体はメスで、これから交尾して卵を産むのでしょう。


ヌタ場
シカの足跡(推定)
シカの糞

 11月中旬、南さんの丸の近くの開けた場所に、ヌタ場がありました。ヌタ場というのは、イノシシやシカが体の表面に付いた寄生虫を落とすために地面に窪みを作って泥浴びをした場所のことですが、一見しただけではヌタ場の主がイノシシなのかシカなのかは分かりません。ヌタ場の中や周辺に残る体毛や足跡で主を推定しますが、困ったことに、イノシシとシカはどちらも偶蹄類なので、足跡もよく似ています。注意深く観察すれば判定できますが、今回のヌタ場の中に残っていた足跡は、恐らくシカのものであろうと推定しました。さらに、奈良公園でもよく見かける俵形のシカの糞も落ちていましたので、ヌタ場の主がシカであることは間違いないでしょう。実際、姿を見ることは殆どありませんが、この時期、時々山中で雄ジカの甲高い声が聞こえてきますので、確かにシカがこの一帯に生息していることが分かります。
 イノシシも姿を見ることは殆どありませんが、山中の所々に餌を探して地面を掘り返した跡がありますので、そこそこの個体数が春日山に生息していると思われます。


参考文献

  1. 各種図鑑
  2. 新潟県ホームページ「レッドデータブックにいがた」
    https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/kankyotaisaku/1214240790991.html
  3. 宇都宮大学報道発表「2004年の急性脳症事例から18年 スギヒラタケを原因とする急性脳症に新たな知見― 3つの成分が複合的に発症に関与ー」
    https://www.utsunomiya-u.ac.jp/docs/20221116sugihiratake.pdf
  4. 静岡大学報道発表「スギヒラタケ摂取による急性脳症の化学的解明― 発症における 3つの成分の関与 ―」
    https://www.shizuoka.ac.jp/cms/files/shizudai/MASTER/0100/ZJirjMhQ.pdf

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