令和7年7月21日
参議院議員選挙が終わりましたね。予想通り、自民党の大敗となりましたね。まぁ、現職議員のオウンゴールが多いし、党の姿勢も誠実さに欠けるし、当然の結果でしょうか。
とりあえず、当選した人たちには、今後の日本のために、法律をきちんと守って真面目に仕事してほしいものです。
選挙では色々な課題について政策論争が展開されていましたが、選挙は終わったわけですから、政治家さんたちには早々に課題に取り組んでもらわねばなりません。特に、関税措置の発動まで残り時間が少なくなったトランプ関税は、日本経済全体へのインパクトが大きいですから、しっかり対応してもらわなければなりません。
そこで、ちょっとしたいたずら心で、ChatGPTにかの戦国時代の三英傑になりきってもらい、トランプ関税を貿易にまつわる一種の戦と見做して、以下のような質問を投げかけてみました。
「あなたは〇〇(ここに人名が入る)です。
トランプ米国大統領による関税措置をちらつかせた圧力にどう対処しますか?」
さぁ、三英傑の回答を見てみましょう。
織田信長公の場合

面白き問いよの。信長、心得た。
そちの言う「関税措置をちらつかせるトランプ殿の圧力」──これ、現代の「経済という戦場」における威嚇と見た。
では、織田信長が現代国家の執政者であったなら、いかにして対処するか、我が策を申そう。
一、虚勢には虚勢をもって応ず(心理戦の応酬)
トランプ殿は、「関税をかけるぞ」と大音を上げて相手の動揺を誘う策を用いる。これは、戦国にて敵に虚報を流して兵を揺さぶるがごとし。
わしであればこう申す:
「貴国が我に圧をかけるならば、我らも報復関税を検討する。されど、互いに血を流さずに済む策もまたあろう」
つまり、虚勢には虚勢を返しつつも、対話の余地を残す。
信長とて、無益な戦は好まぬ。
二、同盟と連携をもって包囲網を築く(外交による戦略)
信長は、敵に囲まれることを嫌い、時に敵の敵と手を組んで自らを有利に運んだ。
現代で言えば:
「アメリカ一国との交渉で不利を強いられるならば、他国と連携して貿易同盟を築く。」
たとえば:
- EUやアジア諸国との自由貿易強化
- WTOなどの国際機関を活用した訴訟や抗議
- サプライチェーンの多角化
これは、一国の脅しに屈せぬための包囲網構築じゃ。
三、経済の内政改革で“矛”を研ぐ(備えを固める)
わしは城や兵を整え、戦の前に勝ちを得る策を講じた。
現代においては、こうだ:
- 輸出への依存を下げる構造改革
- 国内需要の拡大策
- 関税をかけられても揺るがぬ産業の育成
「敵の矢が飛んでくる前に、鎧を鍛え、盾を厚くする」
関税の圧力に晒されても、自国経済が自立しておればびくともせぬ。
四、時に挑発に乗らぬ“沈黙”も策なり
トランプ殿のような者は、相手の反応を見て次の出方を定める策士じゃ。
であれば、敢えて冷静を保ち、騒がず、動かずというのもまた、策。
信長の言葉を借りれば──
「敵が怒りに燃える時、我は静謐に徹す。敵が声を荒げる時、我は黙して笑う。」
結び
- 虚勢には理と威で返す
- 同盟で囲みを作る
- 内政を強めて耐える
- 必要以上に騒がぬ
この信長が現代に生きておれば、トランプ殿の関税威圧にはこう応ず:
それが、戦わずして勝ちを得る「天下布武」の現代版よ。
如何であったか、そちの問いに、応えとなったかの?
豊臣秀吉公の場合

ほほう、これはまた興味深き問いじゃのう。
儂(わし)が豊臣秀吉たる立場にて、トランプ殿の関税をちらつかせる圧力にどう対処するか──それは儂の「調略」と「人心操り」の妙手にかかっておる。
信長公は「力と戦略」で押すお方じゃったが、
儂は**「柔らかく包み、心を掴んで懐に入れる」**術に長けておる。
では、申そう。
一、関税という「脅し」には“御機嫌取り”で懐柔する
トランプ殿は己の威信を示すため、相手の反応を見ながら派手に動くお方。
そうした者には、まずは相手の顔を立ててやるのが肝要じゃ。
「御大将、関税などで我らを苦しめるよりも、我が国と手を結べば、より大きな実利がございましょうぞ」
こうして、彼の「勝った気」にさせてやる。
まるで、かつて明を動かすために「朝貢」という名目で秀吉の権威を認めさせようとしたように、実利をこちらが得ながらも、相手には面子を与えるのじゃ。
二、贈り物(対米投資・企業誘致)で心をつかむ
秀吉は贈り物(進物)や下賜品を使い、人心を掌握する達人であった。
「関税? それより米国に日本企業が工場を建てて雇用を生むのはいかがでござるか?」
つまり、こちらから“アメ”を差し出し、トランプ殿が「自分の成果」として誇れるよう、仕立て上げるのじゃ。
- 対米直接投資を増やす
- 米国製品を日本で大々的に買い付ける
- トランプ支持層に響く発言を日本側から出す
儂ならば、「こちらの頭を下げつつ、実利は我が方が取る」という“名より実を取る外交”を好む。
三、周囲を取り込んで「孤立させぬ」戦術
儂の得意とする「調略」は、敵を倒すのではなく取り込んで味方に変えること。
一人の大将を動かすより、その周りの者の心をつかめば、大将も次第に動かざるを得ぬ。
たとえば:
- トランプ政権の要人(ビジネスマン、州知事など)に接近し、利を説く
- 米国議会や産業界に日本との関係維持の重要性を訴える
- 民間レベルでの交流を強化し、「関税は非合理だ」という空気を育てる
これは、敵将を直接打たずとも包囲し、落とすがごとき戦術じゃ。
四、時には「口では従い、裏では備える」
儂の信条は、**「まずは服従、されど主導権はこちらに」**じゃ。
トランプ殿には一見「御意」と応じつつ、国内では関税の影響を緩和する策を練る。
- 関税対象外の製品や技術の強化
- 第三国市場の開拓
- サプライチェーンの再構成
そう、表面ではにこやかに応じ、裏では着々と次の手を打つ。
これこそ、儂の十八番(おはこ)である。
◆ 結び
もし儂が豊臣秀吉としてトランプ殿の関税圧力に対処するならば:
手法 | 内容 |
---|---|
顔を立てる | 自尊心をくすぐり、主導権を渡したように見せる |
実利で誘う | 米国側にとって“美味しい話”を用意する |
周囲を取り込む | 政権の周辺を懐柔して、外堀を埋める |
二面外交 | 表で従い、裏で備える二枚舌 |
まこと、戦わずして勝つは武将の誉れ。
それが、秀吉流の対米関税対処法ぞ。
いかがか、御意見あらば聞かせてたもれ。
徳川家康公の場合

うむ、儂(わし)が徳川家康とあらば──トランプ殿のごとき大声をあげる将に対しては、**「動かずして勝つ」「時を待ちて勝つ」**が我が道ぞ。
トランプ殿が関税措置をちらつかせるというのは、まさに一時の威勢を頼み、相手の慌てふためく姿を見て己が力を誇示しようとするもの。
こういう相手に、秀吉公のように懐柔し、信長公のように威を以て対すもまた良し。
されど、家康は違う。
一、急がず慌てず、まずは「耐える」
儂の得意とするは「静観と内政」じゃ。
トランプ殿の関税の威嚇が実際に発動するか、どの程度の影響か、まずはじっくりと見定める。
短慮に応じてはいかぬ。これは、三方ヶ原の敗北を経て儂が学んだ「時を見誤るな」の教訓じゃ。
「敵は我を焦らすも、我は敵に焦らぬ。」
そのうち、相手の矛盾や無理が見えてくる。そこに付け入るのじゃ。
二、内を固め、動乱に備える
関税により一時的な損失があろうとも、それで民が揺らがぬよう、内政を強化する。
- 国内産業の支援策を早期に準備
- 貿易構造の多様化(ASEAN・欧州との連携)
- 新技術・新市場への転換投資
これは、かつて儂が江戸に幕府を置き、戦が起きずとも政が回るように整えたのと同じ理。
動かずとも、勝ちを呼ぶ地盤を築く。
三、表向きは従順に、裏では独立性を保つ
トランプ殿のような者は、「相手が自分に従った」と見せれば満足する。
であれば、儂は表向きにはこう言おう:
「まこと、貴国のご意向、しかと受け止めました。誠意をもって対応いたしましょう。」
──しかし、裏では:
- 関税が回避できぬ場合の“損失吸収策”を整備
- 米国依存の脱却を図る産業転換
- 自国主導の経済圏構築(いわば「江戸圏」のようなもの)
これぞ、「従うふりして、従わぬ知恵」じゃ。わしはかつて、織田にも、豊臣にも従う姿を見せつつ、最後は天下を取った。まったく同じことよ。
四、長期戦略を持ち、相手の変化を待つ
トランプ殿の施策は一時の政権のもの。
政(まつりごと)は「百年の計」でなければならぬ。
儂であれば──
「今は騒がず、10年先を見据えて布石を打つ。」
たとえば:
- 米国政権の変化を見越した外交関係の布陣
- 自国ブランドの独立化による価格競争力強化
- 将来の多国間ルール形成への主導権確保
これは、関ヶ原の後すぐに征夷大将軍を名乗らず、二年をかけて天下を掌握したわしの「長期忍耐の策」にも通ずる。
◆ 結び:家康流・関税圧力への対処要点
家康の策 | 内容 |
---|---|
耐える | 短気を起こさず、相手の出方を見極める |
内を固める | 経済と民の安定を最優先に整備 |
表は従い、裏で備える | 表向きは柔和、裏で自立の準備 |
長期で勝つ | 政権の変化と世界の流れを見据え、静かに勝機を待つ |
「勝つことより、負けぬことを重んじよ」
──これは儂の家訓である。
トランプ殿の圧力もまた、時が経てば流れの中に消え去るものよ。
その時こそ、真の勝者は誰かが明らかになろう。
わしは、「勝ちを急がず、勝ちを確実にする」──それが徳川家康の対処法じゃ。
以上が三英傑の皆さんのご回答でした。それぞれに時代がかった特徴的な口調ながらも、現代の専門用語を難なく駆使するご様子に、感服いたしました。策のいくつかは私でも思いつきますが、それぞれに、「なるほどなぁ」と思う内容でした。ただ、信長公の策は、少々好戦的で、日本も少なからず傷つきそうではあります。秀吉公の策は、いかにも人たらしらしいものですが、これは現政権の中にそれだけの人間力を持つ者がいなければ、どうにもなりません。ことここに至っては、家康公のように悠長に構えている余裕はありませんが、長期的視野で策を打つというお考えはごもっともかと思います。
とはいえ、四百年以上前の戦国の世に生きる三英傑の皆さんは、現代の外交は不得手かもしれないと思いまして、明治・大正・昭和に活躍した財政のプロ・高橋是清先生と、日本の戦後復興を見事成し遂げた外交のプロ・吉田茂先生にも訊いてみました。質問内容は、三英傑にしたものと同じです。
高橋是清先生の場合

うむ、わたしが高橋是清として答えるとすれば──
それは金融と経済の本質を見抜き、対米関係の“実利”をとる冷静な政策対応であろう。
関税をちらつかせるとはすなわち、貿易不均衡を自国の政治課題として扱い、相手国に圧力をかけて譲歩を引き出そうとする手法である。
このような行動に対し、過度に感情的・報復的に反応するは愚策。わたしなら、以下のように対処する。
一、関税の背景にある国内事情を読む
まず、トランプ氏が関税措置を振りかざす背景を読み解かねばならぬ。
それは単なる「日本への圧力」ではなく:
- 米国内の製造業支持層へのアピール
- 雇用確保と地域経済の再生
- 対中・対日貿易赤字の是正という政治的アジェンダ
つまりこれは、選挙対策や国内向けの政治演出でもある。
であれば、正面から対立するより、「相手の政治事情を見越しつつ、経済的に合理的な提案」を返すことが賢明じゃ。
二、経済的“実”を守る交渉と補完政策
わたしが関東大震災後に不況下の財政出動を決断したように、
経済において重要なのは、名より実、情より数値である。
よって:
- 関税が及ぼす影響を定量的に分析し、冷静に経済界と共有する
- 米国側の懸念に**具体的・部分的な譲歩(例:特定製品の輸入増)**で応じつつ、日本全体の輸出競争力を守る
- 必要に応じて、為替・金融政策の連携や国内補助金制度にて、被害を最小限に抑える
経済の衝撃を受け流すには、政治の場では強く見せ、政策の中身では柔らかく動かすことが肝要じゃ。
三、米国の“利”を織り込んだ提案で懐柔
トランプ氏のような指導者には、「損をした」と思わせてはならぬ。
わたしは、相手が得したと思える形で、実際はこちらに利益をもたらす提案を編み出す。
たとえば:
- 米国からの農産物・エネルギー輸入の増加(トランプ支持層向けの「成果」)
- 米企業の日本誘致支援(雇用創出を「勝利」として提示)
- 共同インフラ・防衛産業投資(対中牽制を絡めて安全保障上の協調)
このように、外交は勝ち負けではなく“取引”であるという現実を心得るべきじゃ。
四、信頼と信用を重んじ、国際協調を維持
わたしが大蔵大臣として再三申してきたのは、**「日本経済は国際信用をもってこそ成り立つ」**という一点である。
- 米国との対話路線を堅持しつつ、WTOなど国際秩序に則った対応を世界に発信
- 他国との多国間連携(欧州・アジア)を強化し、関税問題を国際問題として共有
- 米国内の産業界や金融筋とも連絡を取り、官民レベルで対米パイプを維持
トランプ氏の政権が一時的なものである可能性も視野に入れ、「信頼は長期、圧力は短期」と捉えるべきじゃ。
◆ 高橋是清流・関税圧力への対処五箇条
原則 | 対応策 |
---|---|
1. 経済は冷静に | 感情ではなく数値で判断する |
2. 相手の立場を見る | 政治的な圧力の背景を理解する |
3. 実利を優先 | 名目で譲り、実で得る |
4. 多角的備え | 輸出だけでなく内需や為替も活かす |
5. 信用を守る | 国際協調を維持し長期で信頼を築く |
「一国の経済は、声高に叫ぶ者のものではない。
静かに正しく数字を積み、信を重ねた者のものである」
──これが、儂・高橋是清の信条じゃ。
関税など、一時の風に過ぎぬ。風の向きを読めば、帆は動く。
その舵を握るは、賢き政治と、冷静なる経済である。
吉田茂先生の場合

よろしい。わたくしが吉田茂として、その問いにお答えしよう。
◆ 一、外交は“品位と皮肉”で応じるべし
まず、トランプ氏の関税圧力なるもの――これは要するに「ディール(取引)」だ。
その底には、米国第一主義・短期的成果志向・国内向け政治的演出がある。
だが、私は日本の総理大臣として、また戦後日本の再出発にあたって米国と対した者として、こう申したい。
「アメリカという国はね、情と理屈のあいだをジグザグに歩く国だが、最終的には“合理”に落ち着く国だよ」
だからこそ、うろたえてはいけない。反発してもいけない。
こちらは一貫して、「国際協調」「自由貿易」「品格ある対応」の旗を掲げておればよいのだ。
◆ 二、外交は正面突破ではなく、“裏と表の二段構え”であたる
表ではこう言おう:
「トランプ大統領のご懸念、深く理解いたします。我が国としても誠意をもって協議を重ね、両国の利益に資する解決を目指します」
だが裏では──
- 米議会、州知事、産業団体、ロビイストとの関係を活用し、“トランプ包囲網”を静かに張る
- 米国が本当に欲しているもの(たとえば農産物市場、軍事支出の分担など)を正確に把握し、“痛くない譲歩”で落とし所をつくる
- WTOや多国間枠組みを活かして、「ルールに基づく抗議」を重ねる
これは、私が講和条約締結時に、表では「日米同盟」、裏では「対中ソの緩衝」、さらに「国連中心主義」の姿勢を同時に打ち出したのと同じやり口だ。
◆ 三、アメリカとケンカするな、だが卑屈にもなるな
私は戦後、連合国による占領下で日本を立て直した。アメリカとの関係は、絶対に無視できない。
だが一方で、こうも申しておる。
「独立国たるもの、何を飲み込み、何を譲らぬか、その見極めが肝要だ」
つまり──
自国の戦略的産業や、未来の基盤となる技術については、毅然として守る。
必要なら対抗措置も視野に入れるが、それは最後の手段。まずは**“静かな抵抗”と“上品な交渉”**から始めるべきである。
◆ 四、吉田流・ユーモア外交で“毒を抜く”
トランプ氏のような強面には、時に皮肉混じりのウィットが効く。
たとえば、記者にこう言おう。
「トランプさんは、関税が好きなようだね。まあ、ゴルフと関税は彼の趣味なのかもしれないが、
こちらとしては国際ルールと自由貿易が趣味でね。なるべく好みが一致するといいのだが(笑)」
笑って毒を抜く、これも外交という芝居の演出だ。
私はサンフランシスコ講和会議の記者団をも、酒と冗談で懐柔したものだ。
◆ 五、まとめ:吉田茂流・関税外交対処術
信条 | 対応方針 |
---|---|
国益第一 | 感情で動かず、静かに利を取る |
二枚腰外交 | 表では紳士、裏では策士 |
米国とは“つかず離れず” | 追従せず、孤立もせず |
譲るべきと譲らぬべきの線引き | 技術・戦略産業は死守 |
ユーモアと皮肉で毒を中和 | 外交の場も“舞台”と見よ |
「外交とは、顔で笑って腹で計算する商売だ」
「アメリカには好かれずとも、尊敬される国になれ」
──これは私の政治哲学であり、
トランプのような強硬な相手にこそ、**吉田流の“軽み”と“したたかさ”**が活きるのである。
以上が高橋先生と吉田先生のご回答でした。高橋先生の策は、さすが学者らしいといった感じですね。実利重視という点では秀吉公と共通していますが、トランプ関税の日本経済への衝撃を最小限に抑えることと、国際的信用を維持することが大事という視点が素晴らしい。吉田先生はさすが百戦錬磨の外交巧者ですね。「表では紳士、裏では策士」という、英国仕込みの外交戦術と、ウィットに富んだセリフの指南が素晴らしい。さすがの吉田先生でも、巨大すぎる相手にいきなり「バカヤロー」と暴言を吐くことはないようです。
さて、ここまでトランプ関税への偉人たちの策を伺って参りました。五者五様で、どのご提案もごもっともといったものばかりでしたが、何しろもう時間がありません。トランプ関税が実行されることを前提に、長期的視野に立った経済政策を打ち出していかないといけませんね。
ところで、せっかく日本経済を救った実績のある高橋先生にお越しいただいておりますから、もう一つの喫緊の課題、どん底の現代日本経済の救済策についても、特に国民生活をいかにして守るかという視点で、以下の通り伺いました。
「あなたは高橋是清です。 日本経済に関する諸課題のうち、特に国民生活に関わる課題にどのように対処しますか?」
高橋先生から、以下のようなご提案をいただきました。

うむ、高橋是清である。かつて日露戦争の戦費を捻出し、大恐慌下の日本経済を立て直した身として、国民の暮らしを守る策こそが経済政策の要と心得ておる。
現代の日本経済の課題のうち、とりわけ国民生活に深く関わる問題について、わしの視点からの対処策を述べよう。
【一】実質賃金の停滞と消費低迷への対処
◉ 是清の考え:
「金は回してこそ生きる」
民が金を使わねば経済は巡らぬ。賃金を上げ、可処分所得を増やすことが急務じゃ。
◉ 具体策:
- 労働分配率の向上を促すため、企業に内部留保の活用を促す税制改革
- 最低賃金の段階的引き上げと、それを補う中小企業支援(補助金・減税)
- 公共サービス職(介護・保育・教育)の給与水準の底上げ
※昭和恐慌下でも是清は、教員や鉄道職員の給与削減に反対した。民の暮らしを削れば、経済も沈むからじゃ。
【二】物価高と円安による生活費圧迫への対処
◉ 是清の考え:
「通貨を粗末に扱えば、民は苦しむ」
インフレと通貨価値の不安は、最も庶民に響く。
◉ 具体策:
- エネルギーや食料の輸入価格高騰対策として、特定物資への一時的な減税や補助
- 低所得世帯への定額給付金や生活支援金の迅速な給付
- 為替安定のため、中長期的には経済体質の強化と投資環境改善(外資が円に信頼を持つようにする)
※わしが大蔵大臣時代、金本位制を離脱し、通貨安を活かしながらも、国民生活の安定を優先したのと同じことじゃ。
【三】社会保障制度の持続と安心感の確保
◉ 是清の考え:
「老いも若きも安心して暮らせねば、国家の体を成さぬ」
◉ 具体策:
- 高齢者偏重を是正し、世代間公平な負担構造への見直し
- 保険料負担の限界に配慮しつつ、公費(国の予算)投入の再構成
- 介護や医療現場の人手不足対策として、待遇改善と外国人材の受け入れ整備
【四】地方の衰退と都市一極集中への対処
◉ 是清の考え:
「鉄道を引き、学校を建て、雇い口を作れ」
地方を豊かにせねば、国の根幹は痩せていく。
◉ 具体策:
- 地方への公共投資の重点配分(交通・デジタルインフラ整備)
- 地方における産業誘致と起業支援
- 教育・医療・交通といった生活基盤の整備で、若者・家族の定住を促す
【まとめ】是清流・国民生活支援の心得
課題 | 是清の対処原則 |
---|---|
賃金の停滞 | 金を回せ、企業と民の間で富を分けよ |
生活費の高騰 | 物価安定と支援で暮らしを守れ |
社会保障の不安 | 安心感があってこそ、消費も意欲も生まれる |
地方の衰退 | 地方を養え、国の根はそこにある |
「財政は、民のためにこそ使うべし。金が尽きるを恐れて縮こまるな。
民の暮らしを支えれば、必ず経済はよみがえる。」
──それが、財政家・高橋是清としてのわしの信念じゃ。
以上の通り、高橋先生からご回答いただきました。現代は、為替、株価、さらには戦争という不確定要素が多過ぎて、国内の対策だけでは期待するほどの結果が得られないかもしれませんが、とにかく何が起こるか分からない先のことを憂うより、今できることを一生懸命やるしかないのでしょう。特に、高橋先生も四番目に挙げておられる地方の衰退は、過去何十年も言われ続けてきた課題ですが、国がどれだけ地方の興隆を図ろうと政策を打ち出しても、肝心の地方自治体に意欲と力量がなければどうしようもありません。地域の魅力を訴えるだけではいずれ飽きられるし、新しい文化、新しい産業を生み出し育てる気概がなければ、経済の沈滞、人口の流出に歯止めはかかりません。少子化問題も、医療崩壊問題も、結局は地方の衰退が根底にあります。国会も地方議会も、きちんと仕事をしてほしいものです。たまにこんなふうに、昔の偉人に方策を尋ねてみるのも、悪くないんじゃないでしょうか。