新潟県上越市には、市街地に隣接するように春日山があります。春日山は日本百名城の一つとして知られる戦国大名・上杉謙信の山城がありました。現在も空堀や土塁などの遺構が残り、歴史や城郭が好きな人たちにとっては魅力的な城址です。上越市は上杉謙信の知名度を生かした観光や文化の振興に取り組んでおり、春日山についても、山城の遺構を残す歴史的、文化的価値のある山として広報しています。しかし、春日山とその周辺の豊富な自然に着目した広報は必ずしも充分とは言えません。令和5年12月20日に春日区地域協議会が上越市長に提出した「春日山城跡の観光振興策について」という提案書の中でも、24ページにわたる提案書のうち、約4ページほどの分量を割いて春日山の自然環境に触れていますが、実質的には観光客の目を楽しませるための人為的なフラワーパーク構想といった内容のもので、生態学的視点に立ったものではありません。
春日山は、地元の英雄の居城があった山としての歴史的価値から、大規模な開発を免れてきたと考えられますが、幸いなことに、春日山のみならず、北は日本海の海岸線近く、西は桑取、南は妙高市新井まで、上杉氏の砦群を内包する、かなりまとまった広大な山林が残されており、様々な動植物が織りなす複雑で多様な生態系を観ることができます。こうしたことから、春日山とその周辺は、生態学の研究対象として過小評価されるべきではないと私は考えております。
まずは地道にではありますが、自らの足で春日山を中心とした山林を歩き、自らの五感を駆使してその生態系のありさまを探究したいと思います。
なお、春日山とその周辺を歩くのに頼りになる詳細な地図というものがなかなかないのですが、上越市が製作した「春日山城跡めぐり」と金谷北地区農村元気会が製作した「春日山古道散策マップ」には比較的詳細な地図が載っており、大変重宝しております。